特集 低酸素に打ち克つ
【COLUMN】
「Happy hypoxia」について再考する
田中 悠也
1
,
倉原 優
1,2,3
1国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科
2国立病院機構近畿中央呼吸器センター感染症内科
3国立病院機構近畿中央呼吸器センター臨床研究センター
pp.491-493
発行日 2024年8月1日
Published Date 2024/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1437200771
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肺疾患をもつ患者が低酸素状態に慣れてしまうということは,呼吸器科医であればしばしば遭遇する現象である.COVID-19のHappy hypoxiaはそのなかでも特によく知られている.しかし,その機序はいまだにはっきりわかっていない.
COVID-19は5類感染症に移行し,公費負担は2024年3月末で終了した.日々の生活の中ではCOVID-19は克服されて,かつての日常が戻ったように思われる.しかし,当院は引き続きCOVID-19の診療を行っている.酸素投与が必要な患者を,今も定期的に入院で受け入れている.最近経験した当院の症例も,両肺の広範な肺炎像を認めたが,呼吸困難の自覚がなくHappy hypoxiaを呈した.高齢で,糖尿病が基礎疾患にあり,COVID-19に特徴的な,両肺の広範囲の肺炎像を認めた(図1a).2L/分の酸素投与を要した.レムデシビル,デキサメサゾン,およびバリシチニブを投与したが不応であり,2週間後に肺すりガラス影が浸潤影に変化し,酸素投与量も7L/分に悪化した(図1b).しかし,やはり呼吸困難はなかった.ステロイドパルス療法を行ったところ室内気に戻り一命を取り留めた.
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