特集 低酸素に打ち克つ
【COLUMN】
高高度における呼吸生理
田中 悠也
1
,
倉原 優
1,2,3
1国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科
2国立病院機構近畿中央呼吸器センター感染症内科
3国立病院機構近畿中央呼吸器センター臨床研究センター
pp.392-394
発行日 2024年8月1日
Published Date 2024/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1437200759
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空の上というのは,いつの時代も人類があこがれる場所である.しかし,2,500mを超える高所では,人は急性高山病,特に最重症型である高地肺水腫を発症する可能性があるため注意が必要である1).
興味深い報告で,エベレストで動脈血液ガス分析を測定した論文がある2).特に,高地で動脈血液ガス分析を行った報告は限られる.同論文によると,動脈血酸素分圧(PaO2)は高度の上昇とともに低下するが,ヘモグロビン濃度が上昇し,酸素飽和度(SaO2)は標高7,100mに達するまでは維持される.しかし,標高8,200mに達すると,平均SaO2は26%も低下していた.どれほど訓練し熟練した登山者であったとしても,標高8,848mに達するエベレスト山頂の低気圧低酸素環境が,人の耐久限界に近い可能性があると示されている.
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