扉
インフォームド・コンセント
生塩 之敬
1
1国家公務員共済組合連合会大手前病院
pp.605-606
発行日 2003年6月10日
Published Date 2003/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436902398
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今日の朝刊を開けると,“○○大学病院医療ミス:国に3000万円賠償命じる”という見出しが目に留まりました.最近では,ほとんど連日のようにこのようなニュースがあります.
暗い気持ちになりながら内容を読んでみると,患者さんは9年前に脳動脈瘤の治療を受けた68歳の女性であり,裁判長が“手術と患者の死亡には因果関係がある.担当医師は手術の危険性を十分説明すべきだった”と指摘したとあります.私が知る○○大学の脳神経外科とこのような指摘は不釣合いで腑に落ちませんが,新聞記事でありそれ以上の詳細は分かりません.最近身近でも,説明不足(?)による問題が生じました.この患者さんは,脳ドックで右中大脳動脈瘤が見つかり,手術を希望され,開頭術と動脈瘤頸部クリッピングが何事もなく施行されました.しかし,術後に右の視力が消失しました.原因は,眼動脈の閉塞によるものでしたが,無論,手術操作とは関連がなく,すでに存在が判明していた高度の動脈硬化が原因と考えられました.訴えは,患者さんの親戚から起こりました.“場合によっては死亡することも寝たきりになることも手足が麻痺することも説明を受け理解していたが,片目が見えなくなることは聞いていない.片目が見えないで人生を送る苦しみをあなたに分かるか”というものでした.確かに,失明と手術には直接とは言えないまでも因果関係がありますが,思いもよらない副作用であり,術前の説明にはこのことは言及されていませんでした.
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