読者からの手紙
身体障害者福祉法における意見書作成についての問題点
坂口 新
1
1新世紀脳神経外科
pp.471-472
発行日 2003年4月10日
Published Date 2003/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436902382
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私は脳神経外科医として29年間診療にあたってきた.そして15年間身体障害者福祉法の指定医師として肢体不自由について,主として脳疾患患者の意見書(診断書)作成に関与してきた.そこで痛感するのは身体障害の等級認定が脳障害患者にとって極めて不利なことである.たとえば,失語症は音声・言語・そしゃく機能の障害に分類され,たとえ全失語で言語によるコミュニケーション不能でも3級である.全失語の場合,買い物・交通機関の利用などは介助無しには不可能で自立困難である.しかし心臓ペースメーカー装着の場合は,自立して労働して給料を受けていても1級と判定される(厚生労働省はペースメーカーが機能しなかったら生命に直結するとの説明である).
脳卒中の患者さんは手足の運動マヒ以外にも,失語・失認などの高次機能障害や視野障害・感覚障害・嚥下障害・平衡障害などを合併することが多い.これらの合併症状は,肢体不自由で意見書を記入する場合は単に参考となる合併症状として小さな空欄に記入するだけである.脳卒中による片麻痺は随意運動障害であり,他動的関節可動域などほとんど意味がないのに関節可動域に大きなスペースがさかれているのも,脳神経外科医としては違和感を感ずる.肢体不自由が運動器疾患と位置づけられているため,意見書の審査も整形外科医が中心となるので,脳の合併症状の評価が軽視されがちである.
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