扉
独立行政法人化を3年後に迎える新設地方医科大学の決意
清水 恵司
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1高知医科大学脳神経外科学講座
pp.696-697
発行日 2001年8月10日
Published Date 2001/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436902076
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「聖域無き構造改革に取り組む」ことを旗印にした小泉内閣の出現で,「聖域無き構造改革」の意味するところとそれに対処せねばならぬという自覚が,われわれ大学人にも徐々にではあるが浸透してきたように思える.むしろ,何をのんびりしたことを言っているのだ,とお叱りを受ける地方大学の現状だと認識している.医学教育の現場にいる私にとって,医療制度を巻き込むことになる医科大学の再編・統合には,国にはより慎重さを,大学人(特に,新設地方医科大学)には建学の精神に立ち戻った猛省が必要であるように思える.現在の窮乏した国の財政状態を考えると,民間的発想の経営手法を取り入れながら,全国に99ある国立大学を再編・統合していくことは当然のことかもしれない.少子化の影響で社会的ニーズに変化が生じている教員養成大学や学部,あるいは獣医学などの分野は,全国レベルでの再編成もやむを得ないのかもしれない.しかし,医科大学の再編・統合,地方自治体への移管などには慎重を期する必要があるように思える.2015年に実施予定の自己負担に基づく先進医療(患者による選択性の強い医療)が,公的医療と混在するようになると,伝統ある大学が自大学出身の若い医師を他府県まで派遣するといった医療社会独特の学閥を温存した状態で,競争原理を促進する単なる業績主義に基づく予算の重点配分を国が行うとなると,都市部と地方との間で医師数や医療水準に関し,現在以上の地域格差をもたらすことが予想される.
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