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最近の貴誌における奥村らの硬膜下血腫の論文(奥村嘉也,他:被膜形成を伴う血腫へ進展する急性硬膜下血腫の検討.脳外26:691-698,1998)を興味深く拝読いたしました.著者らは考察の中で“本進展血腫の慢性硬膜下血腫診断は全く否定されるべきものではないと考えられた”と述べています.その主たる根拠として“新鮮血腫を疑わせる正常形態を示す赤血球が多数存在していた”としています.しかし,以下の点でこの血腫を慢性硬膜下血腫とすることに賛成できません.まず,高吸収域から低吸収域に変化することによって増大するCT所見は,著者らも認めているようにコロイド浸透圧などを主因とする髄液の血腫内流入と考えられ,被膜からの出血の関与はあってもわずかなものであります.次に,著者らの述べている“内膜の確認しえたものは症例1のみであったが,ドレナージから髄液の流出するものはなく”と記載していますが,術中にクモ膜を穿破しないかぎり,内膜はなくとも髄液は流出しません.やはり,著者らの症例の多くには内膜が存在していないと考えられます.そして“進展血腫は受傷14-28(平均20.4日)後に形成された”という経過は慢性硬膜下出血とするにはあまりにも早期過ぎます.
著者らも以上の点を考慮して“本進展血腫の慢性硬膜下血腫診断は全く否定されるべきものではないと考えられた”という控えめな表現を用いていますが,このような臨床像は慢性硬膜下血腫とは異なるものであり,私どもが主張してきました“symptomatic subacute subdural hemtoma”という病態に一致するものです.この病態は放胃されますと,その後に通常の慢性硬膜下上IIL腫になるものと考えていますが,私たちは亜急性期(4週間以内)に治療を必要とする症状を呈するという意味で注目してまいりました.そして,私どもは“symptomatic subacute subdural hematoma”という病態を急性硬膜下血腫や慢性硬膜下血腫とは異なるclinical entityとして位置づけて対応する必要のあることを強調してきたつもりです.著者らのさらなる検討を期待するとともに,多くの読者が決してまれではないこの特異な病態の存在に注目していただきたいと思います.
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