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1978年旧ソ連邦,現カザフスタン共和国のアルマ・アータで行われたWHOの会議で「西暦2千年までに全ての人に健康を」(Health for all by the year of 2000)という宣言が採択されました.この会議ではそのための戦略としてプライマリー・ヘルス・ケアーの概念と方法が取り入れられ特に発展途上国で力を発揮してきました.それによってこの20年間で乳幼児死亡率や5歳児以下死亡率がかなりの国々で低下してきました(UNICEF.The State of the World Children,1995).しかし1990年代後半に入ってから発展途上国の中でも最貧国といわれる国々特にサハラ砂漠以南の国々では健康指標の改善が低迷し,国によってはむしろ悪化しているところも出てきています.その原因の一つに以下に述べる世界銀行(以下世銀)の政策が大きく影響しています.
現在発展途上国の保健医療政策に大きな力を持っているのはWHOよりはむしろ世銀です.世銀は「北」の先進国からの拠出金から成り立っています.その政策決定は拠出金の額によって決められた投票権によっています.拠出金では1994年(世銀発足50年)には日本は米国の218億ドルについで世界第2位で,207億ドルでした.上位は全てG7で占められています.パート一(と世銀が名付けた先進国)の26カ国の総計は867億ドルで,それに対してパート二(発展途上国)の130カ国の拠出金総額は29億5千ドル,しかもその殆どはサウジアラビアの20億ドルで他の「貧しい国々」は殆ど0に等しいのです.従って政策決定に当たっては「貧しい国々」の発言権は殆ど皆無で,G7,中でも米国の発言力が最も大きいのです.
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