扉
脳の機能画像
上田 聖
1
1京都府立医科大学脳神経外科
pp.757-758
発行日 1995年9月10日
Published Date 1995/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436901075
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1990年,アメリカで宣言されたDecade of the Brainも既に半分が経過した.この宣言は脳科学財団等の設立による脳研究に対する財源援助にとどまらず,社会一般の理解を深めるための一大キャンペーンを展開したことなどから,大きな潮流となって全世界に広まり,世界各国に脳研究推進の活動を高めることになった.わが国においても例外ではない.
従来脳研究あるいは神経研究は脳神経外科,神経内科,精神科等の臨床部門と病理学,解剖学,生理学,生化学,薬理学等の基礎部門とを総合するような形で押し進められてきたものの医学部の中だけのことであった.わが国で設立されてきた脳研究施設も病理学(神経病理学)が中心となって臨床と基礎研究が推進させられてきた感が強い.しかしDecade of the Brain宣言は脳研究を「神経科学」としてとらえ,医学部の枠内にとどまらず,理学部,農学部,工学部等も含む学際的研究領域にまで発展せしめることに拍車をかけた.このような動きは画像診断の上でも顕著に現れ,近年急速に進歩発展した多種多様な画像機器の開発はこのような学際的研究の進展によるものといえる.そしてこれらの進歩にもとづいて,脳の画像も形態画像だけにとどまらず機能代謝画像へも大きな関心が向けられるようになった.これまで人文科学や哲学の研究対象と考えられていた精神活動を含む高次脳機能まで画像化の対象になろうとしている.
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