扉
「守・破・離」
脇坂 信一郎
1
1宮崎医科大学脳神経外科
pp.809-810
発行日 1991年9月10日
Published Date 1991/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436900314
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現在各大学あるいは各病院の脳神経外科で行われている医療のあり方,基本となる理念,医のアートとしての部分,さらには手術手技などには少しずつ微妙に異なるものがあり,比喩は悪いが「○○流脳神経外科」とでもいうような違いがあるように思われる.端的な例が「××大学式」などと現わされるように,各教室,あるいはさらにその母教室の永い伝統に培われた一つの流れがあり,そこには先人の血の滲むような努力が積み重なって出来た重みがある.考え方や手技の一つ一つに深い意味が込められているのである.したがって,これから脳神経外科医としての道を歩き始める若い医師は,身近にある自分の所属する「流派」で,代々受け継がれてきた基本理念や手技を先輩医師よりたたき込まれ,それを先ずマスターする必要がある.
最近のように情報があふれ,毎月数回もの脳神経外科関連の学会,研究会があり,各大学間の交流が盛んになって,他施設の考え方,手技などに接する機会が増えてくると,若い人たちは得てして自分の所にない目新しいことに目を奪われがちである.「隣の芝生は青い」と言われているように,何でも他施設のものが良く見え,無批判にそれを受け入れてしまうことがある.もちろん「他流派」のものの中にも,そこでの伝統に培われた良いものは数多くあり,それは積極的に学び受け入れるべきものであるが,その良さというものは「自分の流派」の基本理念,手技を十分に理解,マスターしてこそ見えてくるものであろう.
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