「精神医学」への手紙
宅間守はMCDDか?
高岡 健
1
1岐阜大学医学部精神科
pp.1018-1019
発行日 2013年10月15日
Published Date 2013/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102581
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大阪教育大学附属池田小学校事件についての岡江4)による精神鑑定書を,興味深く読んだ。同鑑定書によると,被告人宅間守には,いずれにも分類できない特異な心理的発達障害があり,その延長線上に人格障害(情性欠如)および妄想反応(嫉妬妄想)があるが,犯行に踏み切らせたものは情性欠如であるという。膨大な鑑定所見と考察により導き出された,この結論には説得力がある。筆者は,宅間の有していた「いずれにも分類できない特異な心理的発達障害」とは何かに関し,児童青年精神医学の立場から1つの可能性を指摘したい。
岡江鑑定に基づいて,小学校入学前から中学校時代に至るまでの宅間の精神医学的特徴をまとめると,次のようになる。第1に,過度に汚れを気にする・女の子の顔に唾をぬったり同級生に小便をかけるといった特徴がある。第2に,「列外位置」(おとなしくもないが徒党も組めないことを表す宅間による造語)であり同年代の子どもから孤立している・父が怖いのに学校から父に対して電話をかけられるような悪いことをしてしまうといった特徴がある。第3に,頭に漢字が浮かびその文字を指で空になぞらなければ気が済まない・戦争シーンや飛行機を操縦するシーンの空想にひたったり,どこかから見られているといった視線に対する過敏さなどの特徴がある。
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