連載 海外での手術経験から学ぶ—手術環境・道具・技術そして心の重要性【新連載】
扉
森田 明夫
1
,
大畑 建治
2
1日本医科大学医学部脳神経外科
2社会医療法人弘道会なにわ生野病院
pp.1353
発行日 2021年11月10日
Published Date 2021/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436204520
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コロナ禍のために国際交流は冷え込んでいますが,この状況下であるからこそ,第29回脳神経外科手術と機器学会(CNTT 2020)の特別企画「海外での手術経験から学ぶ」は光輝くセッションとなりました.医学における国際交流は,金融に基づくグローバリゼーションに対し,人的ネットワークを基本とします.縁あって知り合った,そして意気投合した者同士で,学術的また個人的な交流を手間暇かけて深め,信用を高めながら,その国の文化や制度をより理解し,自国の医学の発展に還元しながら人生を豊かにするものです.大学などの組織間の国際交流も人的ネットワークが基盤です.
異国での手術は難しい症例が多く,しかも学会場での生中継など,多くの見学者がいる中で行われます.招かれて手術する以上,先方の期待は高く,適切な時間内に見学者が得心する結果を示す必要があります.どんな手術でも夕方までには終えることができる技量が求められます.体位,皮膚切開,開頭を自ら行い,時には切れないハサミを使い,先端の摩耗したドリルを使いながら手術を進めます.手術をしながら同時に口も動かして手術を解説します.見学者からの質問は絶え間なく続きます.世界共通言語の英語を使いますが,ほとんどが自国訛りであり,その癖に慣れることも必要です.言語野・運動野・視覚野をフル回転させながら,あるときは日本では履くこともないLLサイズの長靴を履いてフットペダルを探します.
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