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Ⅰ.はじめに
急性期脳梗塞に対する血管内治療は,マイクロカテーテルを用いたウロキナーゼ動注療法(局所線溶療法)から始まり,中大脳動脈(middle cerebral artery:MCA)閉塞症において一部有効性が示されたが6,17),より質の高いエビデンス28)を有する遺伝子組み換え組織プラスミノゲン・アクティベータ(recombinant tissue-plasminogen activator:rt-PA)静注療法の承認によって一時行われなくなった.しかし,2010年に血栓回収機器であるメルシーリトリーバー24)が承認され,rt-PA静注療法の無効例・非適応例に用いられるようになった.翌年には血栓を局所で吸引するペナンブラシステム18)も承認されたが,2013年にホノルルで開催された国際脳卒中会議(International Stroke Conference:ISC)において,3つのランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)2,4,11)でその有効性が否定され,“ホノルルショック”と呼ばれた31).しかしその後,ステント型血栓回収デバイス(以下,ステントリトリーバー.Solitaire FR, Trevo ProVue)が承認され,2014年末にオランダのRCTであるMR CLEANにおいて初めてその有効性が示された1).これを受け,当時進行中であった多くのRCTが登録を中止して解析を行い,2015年2月に米国ナッシュビルで開催されたISC 2015にて,さらに3つのRCTで有効性が示された3,7,21).われわれはこの結果を,本治療の普及への期待を込めて“ナッシュビルホープ”と呼んでいる.その後,さらにもう1つのRCTでその有効性が証明され10),2015年末までに合計5つのRCTが発表されたこととなる.
本稿では血栓回収デバイスを用いた治療に焦点を絞り,そのエビデンスの詳細と実施における工夫,さらには今後の展開について考察する.
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