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Ⅰ.はじめに
新しいMRI技術の脳神経外科領域への臨床応用は目を見張るものがある.特に,最新のfunctional MRI(fMRI)とdiffusion MRI(dMRI)の結果を,それぞれ「脳機能(脳皮質機能)」,「神経路」として可視化した画像は見る者に大きなインパクトを与える.
Fig.1は,当施設の3テスラMRI装置で撮像した,言語タスクによるfMRIの賦活領域(青が運動性言語野,緑が感覚性言語野)と,dMRIを用いてその間をつなぐ「神経路」をオレンジ色で可視化したものである.これが“脳機能と神経路”であると言ってしまうのは簡単であるが,この“絵”をどこまで信じてよいのであろうか? 特に,この画像のend-userとしての臨床医にとって,その可視化の機序をできる限り理解しておくことは大変重要であり,真に臨床に役立つ画像になるよう臨床の現場から逆にfeedbackをかけるのが臨床医の役割と考えている.そこで,本稿では特に,「神経路の可視化」の方法についてその理論を紹介し,理解の一助となることを目指す.
理解のために,数多ある「神経路(fiber tract)の可視化」の方法を系統的に分類できればよいのであるが,例えば,deterministicな方法論とprobabilisticな方法論に分けるとか,streamlineを描画する手法とpath probabilityのマッピングに分けるとか,数学的モデルに強く依存(dependent)しているかいないか(independent)で分けるなどの分類は,いずれの軸も互いに独立していれば大変わかりやすい整理分類ができるのであるが,残念ながらいずれの項目も互いに入り組んだ関係にあり,話は複雑である.
そこで本稿では,われわれ臨床医が可視化の機序を理解するために論文を読み進めるにあたり重要と思われるいくつかのキーワードを挙げた.
・歴史的概略
・Pipelineについて
・2階テンソルによる拡散現象の記述とその限界
・球面調和関数の導入
・Bayes統計の導入
・「一意に決める」のか,「確率密度関数」で表現するのか
・拡散の等方成分と不等方成分の取り扱い
これらについて逐次説明を加え,結果として少しでもこの領域の見通しがよくなり,方法論についての原著論文を理解するための手助けになることを目的とする.なお,本稿ではdMRIで描出される「fiber tract」は「神経路」を反映しているものとして解説する.
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