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経営にはヒト・モノ・カネといわれる「ヒューマンリソース」,「サプライチェーン」,「ファイナンス」の視点をバランスよくマネジメントすることが肝要であり,病院経営においてもこの方向性を視野に入れることの重要性が指摘されています(多摩大学医療・介護ソリューション研究所:石井富美先生).
昨年10月より病院長に就任し,医療安全および感染対策や保険診療の課題に加えて病院経営・運営に関わることになりました.従来から大学およびその附属病院の役割は診療・教育・研究の3本の柱が基本であると理解してきましたが,昨今の医療事情を勘案すると,さらに医療経営・経済に関する知識の重要性が高まっているのが現状ではないでしょうか.消費税率の引き上げや診療報酬の改定に左右される病院経営ですが,毎月の診療会議をはじめとする多くの院内会議の重要項目の1つが,医療収入・収支状況の報告になっているのも事実です.今まで,距離感をもっていた医療経営に視点が向くようになったのは,副院長に指名された時からでした.あまりにも知識がなく,毎月のいろいろな委員会に出席しても議事内容についていくことができない辛さをしばしば感じていました.その時期にたまたま書店の一角で目にしたのが,川渕孝一教授(東京医科歯科大学大学院)が監修される『医療経営士テキスト』でした.そして「医療経営士認定制度」の存在を知りました.『医療経営士テキスト』は,初級・中級・上級に分かれていますが,それに対応するように医療経営士は3級・2級・1級の3段階にランク分けされています.初級テキストには,医療経営に関する基礎的事項(医療経営史,医療行政,医療関連法規,医療関連サービス,病院の仕組み,各種団体・学会の成り立ち,診療科目の歴史,医療技術の進歩,患者サービス,生命倫理・医療倫理など)が幅広く記載されており,現場に役立つ内容でした.そこで,この資格を取得しようと考え,テキストを購入し,年3回施行される3級の試験準備をすることにしました.当初は,副院長業務と診療科長業務が重なり大変でしたが,何とか3級の資格試験に合格し,3級の資格を取得しました.中級テキストでは医療経営に関する理念,ビジョン,戦略,医療IT,診療報酬制度,広報,ブランディング,部門別管理,イノベーションとリーダーシップなどが解説されています.さらに上級テキストでは,病院経営実践に関するBSC(バランスト・スコアカード),SWOT分析,クリニカルパス,医工連携,医療ガバナンス,医療の質マネジメント,医療事故とクライシスマネジメント,DPC,保険外診療などが論じられています.その後,全国的に次第に医療経営士の資格が認知されるようになり,いろいろな病院の事務部門,税理士,公認会計士さらに医師,看護師の中にも取得される方が増えてきているのが現状です.また,「全国医療経営士実践研究大会」も立ち上がり,医療経営士間の情報共有化も進みつつあるようです.医療経営士の知識が,すぐ各病院の立ち位置・実情に対応できるわけではないでしょうし,収支改善に反映されるわけではありませんが,激動する医療の流れに少しでもスピード感と緊張感をもって対峙する意味で有益ではないかと考えます.詳細は,一般社団法人日本医療経営実践協会(http://www.jmmpa.jp)に連絡をとればいろいろな情報を入手できます.健全で安定化した病院経営・運営の担保が,ひいては診療・教育・研究の活性化にも影響する時代といっても過言ではないかもしれません.
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