扉
言葉について思うこと
木下 和夫
1
1宮崎医科大学脳神経外科
pp.411-412
発行日 1989年5月10日
Published Date 1989/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202811
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文章を書くことが下手でいつも苦労している私にとって,この"扉"を書くのは重荷であるが,お断わりする理由もない.以前もこの欄で言葉について書いたが,日頃その大切さを痛感しているので,今回も少し内容を変えて書いてみたい.
言葉は生きていて,時代と共に変化して行く.ある言葉は長い間意味が変わらず,古い形のまま残り,あるものは意味が変化しながらも生き長らえ,あるものは死語となる.単語だけでなく,文章も変化する.私はその時代による変化は文学作品の方が,医学関係のものより強いのではないかと感じている.しかし,英語の医学論文と,日本語の医学論文とを比べてみると,後者の方の変化が激しいと思う.明治20年から30年頃のわが国の医学論文を読むと,現在でも読み直す要のある論文でもあり,書いた人も優れているとは思うが,文章といい,内容といい優れたものが多い.最近のものと,私が大学を出た頃のものと比べても色んな点で変化している.良くなったかというと逆である.最近わが国のある作家が脳死に関した日本語医学論文を読んで,こんなに悪文が多いのには驚いたというような事を書いていた.私もそんな感じがする.年のせいだけでもないと思う.これら変化の中で気付いたものをいくつか取り上げる.
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