扉
明治の外科書—わが国での最初の脳外科手術?
関野 宏明
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1聖マリアンナ医科大学,第2外科
pp.115-116
発行日 1988年2月10日
Published Date 1988/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202537
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フナ釣りは「釣りはフナに始まり,フナに終る」といわれるように,釣りのうちでは入門の釣りであると同時に最も難しいものの一つに挙げられている.手術と釣りとを比較するのは多少はばかられるが,手術を釣りに例えるとすれば,フナ釣りに相当するものは外傷の手術ではなかろうか.著者もその例外ではないが,多くの脳神経外科医が最初に執刀するのは外傷例であろう.その一方で症例の内容は千差万別で,十分な術前検討を行う時間もなく緊急に手術を行わねばならないことが多く,経験と実力が問われるところである.これは歴史的にもいえるのではなかろうか.
偶然の機会に慈恵医大の図書館で,数種類の明治時代の外科の教科書を目にする機会があった.その中で最も興味を引かれたのは東京日本橋区で明治13年(1880年)10月に発行された佐藤進の著した「外科通論・各論」(初版,図1)であった.興味を引かれた理由は,この書の序に「挿入スル所ノ圖ハ歐洲諸大家ノ著書ニ就キ之ヲ摘出スルヿアリト雖余カ順天堂醫院幵陸軍奉務中歴見セシ患者ノ照影或ハ摸畫積テ殆ト百葉ニ至レリ(中略)諸氏ノ外科各論等ヲ本資トス而テ之レニ余力實験ト管見ヲ加フ」とあるように単なる外国の書物の紹介,引用のみではなく自験例の報告が含まれていることにあった.
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