扉
心の糧
斎藤 義一
1
1鳥取大学脳神経外科
pp.417-418
発行日 1976年5月10日
Published Date 1976/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200447
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卒業試験も終りに近づくと,よく卒業予定の学生諸君から,先生は何故脳外科を志望されたのかと聞かれます.これは私にとり甚だ具合の悪い質問であり,簡単明瞭な答を持ち合わせません.しかし過去に此の種の記事を読んだり人の話を聞くうちに,幾つかの答えが用意され,これらをとりまぜて参考までに答える習慣が身につきました.即ち脳外科治療の劇的な効果への驚きを語り,あるいはその深遠な研究へ敢えて挑戦をすすめるなどであります.
私自身は終戦前年に卒業し東大第一外科に入局しましたが,そこで,アメリカ留学中を,開戦のため交換船で帰国後間もない,当時の講師清水健太郎先生を知り,その人間的魅力にひかれ,はたまた先生から常日頃わが国の脳神経外科が世界的レベルから如何におくれをとっているかを聞かされたりして,今後のわが国脳神経外科のあり方など自己流に判断したものでした.それが何時の間にか終世の恩師と仰ぎ門下の端に名を連ねさせて頂くに至ったのでありますが,学生時代から確固たる信念の下に,外科学以前に精神,病理学まで修得準備された恩師の目からはさぞかしはがゆい存在にみえたことかと思います.
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