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Ⅰ.いとぐち
細胞が,どのようにして形質を維持し,その形質発現をするのかという機構が分子生物学的な手法のもとで,明かになるにつれて,ことに細胞の分化過程に内臓されるこの問題は,こうした事象を端的に代弁するものとして,ことこまかに追究されねばならない重要なものになってきた.高度の分化をとげたと考えられるヒトの神経細胞について,どうした光をあてた上で,さぐってゆくかという技法の問題には大きい弱点が残されたままだといってもよかろう.
私どもは,この問題をin vitroという特殊な環境ではあるけれども,ヒトのneuroblastoma cellを素材にしてさぐろうとした.もちろん,この細胞は悪性神経芽腫細胞として小児の屍体の頸部リンパ節転移からえられた株細胞であるから,その分化像は,正常の生体のなかで発育・分化の過程をたどる神経細胞の分化とは,大きい差があって比較しきれないものがあるという指摘には承知の上での大胆な実験である.しかも,この株細胞は,すでに神経系統のものとしてmajor differentiatiom(藤田)1)をとげたものであるために,primitiveな外胚葉の細胞が神経管をつくりあげ神経芽細胞にいたる過程を大きく抜きにした分化--幅のせまい--を,さぐるものだということにも反省の必要があると考えられる.その点ではこの実験は,それなりの厳しい批判をうけて当然である.
Human neuroblastoma cell line (NB-I), obtained from metastatic neck lymph node of 2.3 y-o, boy, is establi shed and maintained in vitro for more than 3 years in our department. The cells have been proliferated in 10% calf serum in EAGLE's medium, in closed stational culture system. The cell line has characteristic activities of rather rapid growth (Tg=40 or 50h, 1974), catecholamine metabolism and chromosomal abnormality, bearing two marker chromosomes. NB-I cells are uncloned because of co-adhesiveness but biochemically identified as adrenergic line.
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