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Ⅰ.はじめに
腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアに代表される腰椎変性疾患は,加齢に伴う退行変性を基盤としており,腰下肢痛や下肢機能障害,間欠性跛行のため日常生活や社会活動に支障を来す頻度の高い疾患である.高齢化社会を背景に,疾患認識の高まりと画像診断の進歩と拡充により,一般診療でも腰椎変性疾患に遭遇する機会はますます増加している.一方,他覚的身体所見に乏しく,非典型的な臨床症状を呈するもの,画像診断上,高度な異常所見があっても無症候性病変も稀ではないこと,時として非腰椎変性疾患と類似症状を呈するなど,確定診断が困難な場合も多く,安易な診察や対応は厳に慎まなければならない.
治療方針に関してEBMに基づくデータは少ないが,自然経過は必ずしも不良ではなく,薬物療法やブロック治療などに反応する症例も多いため,非重症例では保存的治療を優先させ,その選択肢と内容を充実させる必要がある.神経障害が顕著な例や保存的治療が奏効しない例では,外科治療を考慮する.しかしながら,手術適応に悩む境界領域の症例も多く,患者の要望や社会的背景に照らし合わせ決定しているのが現状である.
腰椎変性疾患をよく認識し,その診断,治療方法を十分理解することは,脊髄脊椎疾患を扱う脳神経外科医にとって大変重要であり,診療の基軸ともなる.昨今の診療事情では,手術が不要であれば,その根拠や将来予測を説明する必要があり,一方,手術加療にて不備が生じれば,有害事象や成績不良の責任を負う可能性が高く,手術適応の決定や術式選択には,より高度で専門的な見識や経験が要求される.また,単に腰椎除圧術といっても,低侵襲手術を含め手術手技や手術器具などが多様化しており,各手術法を整理し,それぞれの利点欠点をよく把握した上で,十分患者に説明し,手術に臨む姿勢が大切である.本稿では腰椎変性疾患に対する後方除圧術の各種方法とその特徴,手技におけるポイントおよび特徴,注意点について概説する.
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