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3月11日未曾有の東北関東大地震が発生し,便利な社会を目指して築かれてきた現代文明が電気やガソリンなどの不足からいとも簡単に混乱に陥り,人類の先端技術の粋を尽して築かれた原子力発電が無残な状態を晒すことにより人々の不安を一層増長している.過去に経験した大災害から全身全霊で築かれた防波堤の安心神話が犠牲者を増加させているように見える.大災害のたびに聞かれる想定外という言葉.自然の変動に対して人はそれを想定し得るのであろうか.想定内とは人の思い上がりとしか感じられないことを味わってしまった.
このような大震災後の心落ち着かない時期に本誌の編集後記の依頼と資料が送られてきました.本号では「扉」には渡辺高志先生から高次脳機能障害に関するご意見をいただいております.すべて今回の大地震に結びつけて読んでしまうようですが,原発事故の説明を聞いても数字と専門用語ばかり並び,さっぱり現状が把握できません.「扉」に示していただいたように,患者さんを診察・検査し,病状とその対応,対策を分かりやすい言葉で説明し,確実な理解が得られることを臨床の現場においては肝に銘じたいものです.「解剖を中心とした脳神経手術手技」では,グロームス腫瘍の手術手技と題して腫瘍の発生,術前検査,頚静脈孔近傍の解剖,手術手技,周術期管理,治療成績に関して中溝 玲先生グループから力作をいただいています.特に手術手技に関してはstep by stepで分かりやすい解説をいただいており,本疾患の実践医療現場で想定外に陥らないように是非とも座右の文献としていただきたい.また連載「先天奇形シリーズ」では,潜在性二分脊椎に関して重田裕明先生に発生学的機序から診断・治療に関して豊富な経験から分かりやすく解説いただいており,皮膚病変からのtell-tale signのまとめとして活用いただきたい.諸藤陽一先生,雄山博文先生には研究論文,木村重吉先生,鴨嶋雄大先生,磯辺智範先生,貝嶋光信先生,笹森 徹先生には症例報告をいただいております.是非とも一読をお願いしたい.
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