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初めて本誌の編集後記を書かせていただきます.年明け早々に分厚い封筒でゲラ刷りの資料が送られてきました.
甲村英二先生からの扉欄では新型インフルエンザを主題材とした日本人の反応,対応策,行動の特徴,古くはオイルショック時のパニック反応を世のリーダー,大衆,マスコミのトライアングルでとらえ,その中に問題解決の糸口がありそうな見解は一読,一案の開扉の言葉となっています.総説欄では師田信人先生から「痙縮に対する機能的脊髄後根切断術」,大槻泰介先生から「難治性てんかんに対する脳神経外科手術の歴史と今後の展望」と題した力作をいただきました.お2人のライフワークとしてこれらの疾患に対する取り組みと歴史的背景から新たな診断治療技術を駆使してQOLの改善を目指されているエネルギーを感じます.犬飼千景先生,森健太郎先生の研究論文,芝田純也先生,奥永知宏先生,榊原陽太郎先生,大城真也先生,木村重吉先生,柚木正敏先生の症例報告は,いずれも日々の診療に役立つ興味あふれる力作でぜひ一読をお願い致します.本誌で特に目を引いた中村紀夫先生の「読者からの手紙」に触れておきます.これは“慢性硬膜下血腫に対する五苓散の有用性”に関して先生のご研究から病態ならびに治療経過に関して詳細なご意見をいただいたものです.まず詳細に本誌の論文を一読いただき,かつ方法論,結果,考察に至るまでご意見をいただけたことに編集委員として御礼を申し上げます.多くの研究論文で最初に結果ありきの形で“…は有用であった”という論文にしばしば遭遇します.しかし自然経過を含め各疾患の臨床経過と治療効果など多くの点で厳密な検討が求められるようになっていることも事実です.Randomized controlled studyは臨床治療効果の検討法のgold standardではありますが,多くの臨床現場での研究においては困難が伴います.したがって,宮上光祐先生のお返事のようにCTなどの新たな手法を導入し経時的な変化の把握などからより質の高いデータを収集し,目的とされる結論を明らかにしてゆくことは日々の臨床では特に重要と思われます.
掲載論文を熟読いただき,個々の意見を発信していただくことは編集者としては最も望ましい雑誌の姿であり,本誌の意義を再確認いたしました.
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