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Ⅰ.はじめに
救急医療の進歩により脳外傷,脳血管障害,蘇生後脳症などの重症な器質的脳損傷患者が救命される機会が増加する一方で,急性期を乗り切ったこれらの人たちは記憶・記銘力障害,情動障害,注意障害,社会的行動障害を後遺し家庭生活,社会生活,職場に適応できず疎外される対象となっていた.日本政府はこの問題を重視し,このような人たちに高次脳機能障害という傷病名を付け身体障害者,知的障害者,精神障害者と同等の「障害者」として行政支援の対象とすることにより,彼らの自立と社会参加に向け包括的な取り組みを開始した24,44).その取り組みの中で厚生労働省は平成13年度からの5年間,高次脳機能障害支援モデル事業を展開し高次脳機能障害の診断基準と支援プログラム(リハビリテーション,生活指導,就労・就学支援)を確立した24).この事業は平成18年度から高次脳機能障害支援普及事業に引き継がれ,以後全国各都道府県に相談窓口が設置され,同時期に成立した障害者自立支援法を背景に患者は障害者としての行政支援が受けられるようになった14,24-26,44,45).現在,高次脳機能障害者は精神福祉手帳を取得し行政支援を受けることが可能であるが,精神福祉手帳を取得しなくても高次脳機能障害の診断証明のみで手帳取得者とほぼ同等の支援を受けることも可能である16,43).
わが国の高次脳機能障害支援普及事業は未だ緒に就いたところであり,高次脳機能障害という用語の理解についても混乱がある.本稿では現在わが国で用いられる高次脳機能障害の定義と診断基準を解説し,その基準に準拠する高次脳機能障害の診断を行うために有用な神経画像の最新の知見について論ずる.
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