書評
『脊椎腫瘍の手術[DVD付]』―富田 勝郎●監修,川原 範夫●編
戸山 芳昭
1
1慶應義塾大学・整形外科学
pp.756
発行日 2010年8月10日
Published Date 2010/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101231
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金沢大学整形外科主任教授をこの3月末に退官された富田勝郎先生が,在任中に取り組んでこられた先生の業績の集大成とも言うべき書「脊椎腫瘍の手術」が医学書院よりこの度発刊された.本書の序文にも書かれているように,この書は正に金沢大学整形外科,富田先生をリーダーとした一門が一つの目的に向かって脊椎腫瘍,特に転移癌と戦ってきた実録であり,手引き書,参考書である.教室の脊椎外科グループと骨腫瘍グループが一体となって基礎から臨床へと進め,実際の手術として世に送り出した術式であり,正真正銘の世界に発信すべき脊椎腫瘍手術書である.従来は全く手がつけられず,対症的治療を余儀なくされてきた転移性脊椎腫瘍,痛みに耐えられずに苦しみ,またまひのために寝たきりとなっていた患者さんへ,金沢大学富田チームが一つの光を差し入れた業績は見事という以外,言葉はない.痛みから解放し,まひも救え,生命予後をも大きく改善させ得る「total en bloc spondylectomy(TES)=腫瘍脊椎骨全摘術」の開発は称賛に値する.思い起こせば十数年前であったか,私がアメリカ整形外科学会(AAOS)に出席した折,確か富田先生の本手術に関する講演が行われていた.その会場の最後列で私もそっと先生の講演を拝聴していたが,講演終了後に満席の会場でいわゆる“standing ovation”により,しばらく拍手が鳴り止まず鳥肌の立つ想いで見ていたことが昨日のように感じられる.私にはその時の素晴らしい光景が今でも鮮明に焼き付いており,自分もいつか先生のように…と感じたことを思い出す.
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