- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本号の総説「先天性水頭症の診断と治療」を読んでいて,ふとわが人生の不思議な経緯を思い起こした.私は,東大卒業時には新生児の神経系外科医療に携わることを決心して脳神経外科に入局した.最初の研修病院は脳血管障害を専門にしている三井記念病院であった.そこで素晴らしい先生方に指導していただき,脳卒中の外科医療にのめりこんでいった.また,講師として東大へ帰ってからは,頭蓋底外科ならびに良性脳腫瘍の手術も専門とした.このように初期の志とは異なった道を辿っているが,よき先輩方との出会いがその後の進路を決める重要な要因となった.竹島教授が「扉」の中で,困難なことにチャレンジする覇気のある学生が少ないことや研修制度の問題などに危機感を持ち,「どげんかせんといかん」との思いを述べている.全国の先生方の共通した思いであろう.学会が中心となって研修制度改革や脳神経外科医の待遇改善を強く訴える運動を継続する必要があることは言うまでもないが,私達が日常できることとして,学生や研修医に「この先生方と巡り会えたことが自分の進路を決定させる要因となった」と言ってもらえるような教育,つきあいをすることも重要ではないだろうか.われわれが必死になって,診断,手術,術後のケアーに携わっている姿をみせていれば,そうした姿に感動し,やりがいを感じて脳神経外科を目指す人は必ずいると思っている.
連載:脳神経外科疾患治療のスタンダードには,太田富雄名誉教授が「意識障害」について概説されている.読み応えのある内容で感服しました.じっくり時間をかけて真面目に書いてくださったことがよくわかります.失礼な表現になるが,こうした現役を退官した先生方をもっと活用させていただき,含蓄のある紙面作りを計画することも重要ではないだろうか.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.