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Ⅰ.はじめに
斜台正中部には,重要な神経・血管が存在しないため,斜台に限局した腫瘍が早期に発見されることは稀である.代表的な斜台腫瘍である脊索腫では,傍鞍部から下方に進展したものが多いが,斜台部から大孔を経て,頸椎に進展するものもある.また,側方に進展して外眼筋麻痺などの症状で発見されるものもある.斜台に対するアプローチは,前方法,前側方法,後側方法の3種類に大別される3).このうち,脊索腫のように正中部に首座がある硬膜外病変に対しては,前方法が選択されることが多い.これには,経蝶形骨洞法9,10),経口法11,13),さらに侵襲的な頭蓋底アプローチであるtransbasal approach 2,12)などがある.
経蝶形骨洞法は,トルコ鞍内病変に対する第1選択の術式として,広く普及している.術野が狭く深いため,トルコ鞍から斜台上部に限局する腫瘍のみが適応と考えられている1).しかし経蝶形骨洞手術は,その低侵襲性から多数のバリエーションが報告されている1,4,7,9,10).後部篩骨洞の開放を追加する拡大法では,前方および側方への術野が拡大し,海綿静脈洞下壁から海綿静脈洞内や蝶形骨平面を経て脳底槽へのアプローチが可能である5).一方,経鼻的経斜台法は,標準的な経蝶形骨洞法の到達範囲を下方に拡大したものである.上咽頭の粘膜を下方に剝離圧排することにより,前方から斜台の骨削除を行い,脳底動脈や脳幹腹側に到達することが可能である.さらに,上咽頭粘膜の切開を追加することで,斜台の最下端で大後頭孔前縁を開放することも可能となる.近年の手術手技の進歩や神経内視鏡の導入などにより,狭く深い術野や硬膜静脈叢からの出血,術後の髄液漏など,本法の問題点は克服されつつある.本稿では,外科的解剖を中心に,経鼻的経斜台法の手術手技について解説する.
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