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Ⅰ.はじめに
近年は神経内科医を含む脳卒中専門医が脳梗塞のt-PA治療を手がけるようになり,その急性期治療の重要性がことさら強調されているが,脳神経外科医は既に半世紀前から,頭部外傷・脳卒中などすべての中枢神経疾患ではその急性期治療の成否が救命と神経後遺症軽減を左右するという数多くの事実を経験しながら,脳神経外科的治療に奔走し続けてきた.しかしながら,急性期治療が終結し残存してしまった慢性期の後遺症,特に片麻痺などの運動障害に対しては,脳神経外科医も多くの場合リハビリテーションに委ねるのみで治療の術を持たず,半ば諦観してきたように思われる.同様に,脳梗塞後のt-PA治療でもそれが奏効せず麻痺などの後遺症が残存した際には,その後の慢性期治療においてはその後遺症治療よりも再発予防ばかりが強調されているのが現状であろう.
脳梗塞後に残存した麻痺はリハビリテーションを中心に治療されるが,約半年の時点で残存している運動障害はほぼ固定すると考えられ8),それ以降はリハビリテーション継続によって機能を維持していくしかないと考えるのが通念であると思われる.それでもリハビリテーション医学の進歩に伴い,慢性期でも運動障害には機能改善の余地があり,さらには脳科学の進歩に伴い,失われた脳神経機能の回復を図る治療への関心も高まりつつある.その中で,米国においては増加を続ける脳梗塞の後遺症・運動障害が大脳皮質電気刺激により改善される可能性が注目され,その臨床トライアルが実施されてきている5, 18)(Fig. 1).本説ではこの脳梗塞後慢性期に残存する,特に上肢麻痺に対する前頭葉運動野への電気刺激療法の動向に注目し,自験例も提示しながらその背景や展望について考えてみたい.
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