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はじめに
脳室短絡術が安定した成績をもって受け入れられる以前には,非交通性水頭症に対する標準的な手術法は第3脳室底開窓術であった.
1922年Dandyは前頭開頭にて終板を開窓することにより,第3脳室と視交叉槽に交通をつけた24).この直達手術は侵襲が大きいため,その後側頭下法にて第3脳室底を開窓することにより第3脳室脚間槽に交通をつける方法に改変した25,26).1945年には,52例の直達開窓術による手術死亡率12%,外科的停止50%と報告した.1923年,初めて内視鏡下に第3脳室底開窓術を行ったのはMixterであった.彼は生後9カ月の非交通性水頭症の乳児に,尿道鏡を用いて第3脳室底を開窓した73).当時は他の外科手術と同様に,第3脳室底開窓術による合併症の頻度や死亡率が高く,また,内視鏡装置の技術的な問題により,第3脳室底開窓術は広く普及しなかった.1947年,McNickleは経皮的第3脳室底開窓術を導入し,第3脳室底開窓術による死亡率は数%以下まで低下した70).しかし,1950年代初頭に脳室心房短絡術が開発・導入され,水頭症の治療成績が格段に向上し,第3脳室底開窓術への関心は薄れていった.その後短絡術後の長期治療成績が報告されるにつれて,合併症(機能不全,感染,over drainageなど)が比較的多いことが明らかとなった.
1975年Griffith,1978年Vriesが,近代化された軟性鏡を用いた第3脳室底開窓術を報告した42,108).1990年Jonesらの24例での治癒率50%の報告,その後35例の集積での治癒・改善率80%,非致死的合併症(片麻痺,感染など)8%の卓越した報告があり,同時期,他の外科領域での内視鏡下手術の発達と低侵襲手術の社会的要求に触発され,第3脳室底開窓術は再び脚光を浴びるようになった56).
本邦では1994年に日本神経内視鏡研究会が発足し,2002年学会に昇格した.同年の診療報酬改正に伴い内視鏡的第3脳室底開窓術は保険診療の適応を受け,非交通性水頭症の標準的手術法と認知されるに至った.しかし,手術症例数が増加するにつれ様々な問題点が明らかになり,昨年度より神経内視鏡の技術認定制度が発足した.この時期に内視鏡的第3脳室底開窓術の問題点を整理し検討することは,時宣を得たことと思われる.本項では内視鏡的第3脳室底開窓術の適応とその問題点,ならびに術後経過とその成績について述べる.
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