コラム:医事法の扉
第9回 「医療水準」
福永 篤志
1
,
河瀬 斌
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.93
発行日 2007年1月10日
Published Date 2007/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100248
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医療は常に進歩していますので,その時代ごとに「医療水準」というものがあります.われわれは,絶えず新しい医療情報に耳を傾け,それらを日常診療に取り入れていかなければなりませんが,全国の医療施設が常に同一水準の医療行為を行うことは,実際問題として不可能と言わざるを得ません.
その点について,最高裁も,「(新規の治療法実施のための技術・設備等の普及は)限られた医療機関のみで実施され,一般開業医において広く実施されるということにならないこともある」(未熟児網膜症事件:平成7年6月9日判決)とし,施設単位で水準が異なり,大学病院と一般開業医との間に「医療水準」の差を認めているようです.また,ある施設における医療水準は,「新規の治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており,当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合」に決定されるとしています.つまり,同規模の病院では,同水準の医療が望まれるということです.もちろん,その医療機関の性格,所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであるといわれています(未熟児網膜症事件).
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