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は じ め に
英文論文を書くときに英語の校正というものをどのように考えていますか? 多くの日本人が英文の校正は単純に英文法,英単語の綴りの訂正だけ直してもらうと考えているのではないでしょうか?
私はトロントの小児病院に来て英文論文を書き始めましたが,来た当初はホフマン先生に見てもらう前に必ずeditorial serviceという部門が1階の図書館の横にあり,そこに通い詰めていました.フランクという元フリーランスの新聞記者がパートタイムで病院に来ていて,時間をかけて私の拙い英文論文を懇切丁寧に読んで直してもらっていました.
フランクから学んだものは,第一に彼に自分の言いたいことを説明することから始まりました.つまり英語を磨く前に自分が持っているものをきちんと話せなければいけない,説明できなければいけないということでした.フランク自身が医学系の論文には慣れていなかったことと,当時,私の英語が拙いせいもあって,論文の主旨,イメージを説明するのにとても時間がかかった記憶があります.しかし,その対話“dialogue”から,自分の論文の主張を形あるものにしていくことができました.現在は私がフランクの立場になって,フェローたちとの対話から論文を紡いでいます.
このeditorial serviceも病院の予算の関係で5年ほど前に打ち切りとなり,それからキャロルとのe-mailによる校正が始まりました.彼女にはまだ会ったことがないのですが,サンディエゴに住んでいる御婦人で,娘さん達は成人して,現在はわれわれの論文と出版社のElsevierの歴史,詩の本の校正をしておられるとのことです.
キャロルからは文章の構成を考えたうえで論文を書き上げるということを学びました.今回はキャロルとの作業を通じて学んできた5つのこと,consistency, cohesiveness, clarity, active voice, rhythmを中心に,神業に近い英文論文の校正を秋山倫之先生(岡山大学小児神経科)1),荒木 尚先生(日本医科大学救急医学)2),越智文子先生(トロント小児病院神経科)3),大石 誠先生(新潟大学脳神経外科)4)の4名の論文の校正を例にとって述べていきます.斜体はキャロルからのコメントです.
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