診療メモ
脳波判読と校正電圧曲線
江部 充
1
1虎の門病院生理学科
pp.1633
発行日 1976年12月5日
Published Date 1976/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206855
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心電図や脳波のように,体表面に電極を接着して増幅器や記録器のような電子機器を使用して検査をする場合,生体での現象がこれらの機器の特性によっていろいろな制約や歪みをうけて表現されることを忘れてはいけない.とくに波形や振幅をみる場合にそれが大切である.脳波の場合,脳波計の低域周波数を決める時定数は0.3秒ということになっている.これが小さくなれば,ゆっくりとした変動の振幅が抑えられるために基線の動揺が少なくなり,一見きれいな記録がとれたように見える.しかし,徐波の振幅もまた抑えられて小さくなっている.また,高域は60Hzまでは平坦な周波数特性をもっていなければならないが,これが守られなくて低域に傾くと棘波(spike)の振幅が小さくなったり,先端が丸味をおびて小さなspikeなどを見逃すこともある,このような周波数特性の変化の原因が,装置の増幅器に由来することもあれば,記録器に由来することもある,このような周波数特性の変化を簡単に見極めるには,なんといっても校正電圧曲線(calibration curve)をよく見ることである.脳波を判読する前にまずこの曲線をながめて,その高さが正しく5mm/50μVか,先端がきれいに尖っているか,時定数が0.3秒になっているか,脳波計の全チャンネルで一列にそろっているか否かを判断しなければならない.
記録器のペン圧のちょっとした差がしばしば波形を歪ませる原因となることがある.
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