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I.はじめに
脳腫瘍は頭蓋内組織を母地として発生する腫瘍群(glioma,髄膜腫,脳神経腫瘍,血管結合組織の腫瘍,神経細胞の腫瘍,下垂体腫瘍,松果体腫瘍)のほか,未熟な神経組織を構成する細胞の形態,配列を模倣する未分化型腫瘍,形成異常にもとづいて発生する腫瘍群,隣接臓器,遠隔臓器からの浸潤転移によって形成される転移性腫瘍を含み,多数の腫瘍型からなっている。これらの腫瘍型はそれぞれ生物学的性状が異なっていて,その組織診断は治療法の決定に重要である。腫瘍の組織診断に従来はCajal,Penfieldなどの鍍銀法が用いられてきたが,手技が困難で,常に一定の染色成績を得ることができなかった。1965年,Moore1)がウシ脳からS−100蛋白を精製し,脳のみに存在する蛋白として記載して以来,多くの神経特異蛋白が報告され,腫瘍の免疫組織診断に利用されるようになった。植村2)はこれらの蛋白を酸性蛋白,細胞質内の骨骼線維構造を構成する線維系蛋白,ミエリン膜,シナプス膜に関係する膜蛋白に大別しているが,神経系に特異的に存在する酵素またはそのisozymeも脳特異蛋白に含まれる。脳腫瘍には神経外胚葉性腫瘍以外にも多数の腫瘍型があるので,第Ⅷ因子関連抗原,AFPなどの胎児性蛋白,HCG,下垂体前葉ホルモンも脳腫瘍診断の主要なマーカーとなりうる(Table1)。
Since the discovery of brain-specific S-100 protein by Moore (1965), a number of proteins and enzymes which are localized exclusively in the nervous system have been identified and purified. The production of the antisera specific for these proteins and enzymes and the improvement in the techniques of immunohistochemistry have resulted in the application of these antigens as markers specific for brain tumors. The purpose of the present paper is to review, based on our personal experience, present state of our knowledge about markers which are used in the field of neurooncology.
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