特集 神経学における最近の研究
<生理>
興奮膜とカルシウム
高橋 国太郎
1
1東京大学医学部付属脳研究施設神経生理学部門
pp.656-657
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904881
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従来考えられていた興奮膜に対するCaの作用は興奮性を抑える方向,閾値を高める方向であった。しかし,この20年間におけるCaイオンに関する研究の進歩は,Caイオンが逆に興奮を促進する側に,活動電位そのものを発生する方向にも働くという点である。
1953年にFATTとKATZは甲殻類の横紋筋で,Naイオンを含まないテトラエチルアンモニゥム(TEA)溶液中でも活動電位が得られることを報告した。TEAは活動電位の下降期を作るK電流を抑制するので,心筋型の長いプラトーを出現させる薬物として知られているものである。1958年になるとFATTとGINSBORGはTEA溶液中でも外液のCaを取り除くと,活動電位が消失することを発見して,甲殻類横紋筋ではイカ巨大軸索とは異なりNaに依存しないが,外液からのCa流入による活動電位が出現するのではないかと示唆した。イカ巨大軸索でも,HODGKINとKEYNSは活動電位に伴う細胞内へのCaの流入を見ている。このようにCaイオンの興奮膜における透過の現象が明らかになりかけたのが,20年前の状況であった。
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