特集 神経学における最近の研究
<解剖>
神経分泌
佐野 豊
1
1京都府立医科大学解剖学教室
pp.644-645
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904876
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神経細胞における分泌現象についてSPEIDELが最初に記載したのが1919年,視床下部の視束前核における分泌顆粒の存在に着目し,E.SCHARRERが系統的な研究を開始したのが1928年,そして神経分泌物の有力な染色法としてBARGMANNがクロムヘマトキシリンを導入し,この方面の研究に飛躍的な発展の基礎を切り開いたのが1949年のことである。以来,神経分泌に関する研究は世界的に注目され,研究人口も増え,数年のうちに,核周部をホルモン生産の場,軸索を輸送路,神経終末と血管によって貯蔵と放出の器官を構成する神経分泌系の大要が明らかにされた。こうして1953年,ナポリにおいて第1回の国際シンポジウムが開催される運びになった。
視床下部後葉系について1928年以来続けられたE.SCHARRERの研究,1949年以後に展開されたBARGMANNとその共同研究者たちの業績は特筆すべきものであり,甲殻類のX器官サイナス腺系に関するHANSTRÖM(1931〜),昆虫の脳間部側心体系に関するB.SCHARRER(1937〜)の一連の報告も,神経分泌研究史の中で歴史的な重要性をもつものである。さらにまた魚類の脊髄尾部における神経分泌系の発見者としての榎並(1955)の名も,最近20年間のこの方面の研究発展を語る以前の重要な研究者として挙げておかなければならない。
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