特集 神経学における最近の研究
<解剖>
局所回路ニューロン
平田 幸男
1
1東京都神経科学総合研究所解剖発生学研究室
pp.642-643
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904875
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これまで多用されて来た変性軸索の渡銀法に加え,最近は軸索流を用いたニューロンの標識法によって,夥しい数の神経路が次々と記載されつつある。しかしこれらの大部分は,いわゆる投射ニューロン,すなわち灰白質から一旦出て白質または神経中へ入る比軽的長い軸索を持つ神経細胞によって形成されるものである。
ところで,ほとんどの灰白質中には,その灰白質から外へは軸索を出さない,短軸索ニューロン,ゴルジII型ニューロン,マイクロニューロン,無軸索細胞などと呼ばれる細胞が存在し,しかもこれらの細胞群は系統発生とともに増加するとされている。最近まとめて「局所回路ニューロン」(Local circuit neuron,LCN)と呼ぶことが提唱されている7)ところの,このような細胞群が構成する回路の解析には,最初にあげたような神経路の追求手段はあまり有効ではなく,したがっていまだ十分に記載されているとは言い難い。しかし灰白質のニューロピルの構成については,量の上ではこの種の細胞の関与が,むしろ高い比重を占めることが多く,また各灰白質に特有なLCNの結合形態が存在することなどから,脳の灰白質の機能を明らかにする上で,この細胞が関わる回路についても,投射ニューロンのそれについてと同様に,十分の解析が望まれる。本稿では,そのための手懸りとして,現時点におけるLCNの形態学的問題点をいくつか取り上げてみたい。
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