Japanese
English
特集 日米合同セミナー—学習と行動の神経生理学的基礎
海馬損傷と行動
Hippocampal Ablation and Behavior: A final Report
二木 宏明
1
Hiroaki Niki
1
1京都大学霊長類研究所
1Primate Research Institute, Kyoto University, School of Medicine
pp.119-126
発行日 1971年6月30日
Published Date 1971/6/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904695
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
緒言
筆者がネズミで海馬損傷の行動に及ぼす効果を検討する研究に着手した1959年当時は,海馬の機能的役割に関する主な仮説としては,海馬が情動に関与しているという仮説(Papez,1937;MacLean,1949)と記憶に関与しているという仮説(Penfield & Milner,1958)とが提唱されていたのである。しかし,データの方は患者で海馬を両側とも切除すると,最近の記憶が失なわれるという臨床報告(Scoville & Milner,1957;Penfield & Milner,1958)以外にはほとんど何もないといつても過言ではない状態であつた。動物実験では,情動における海馬の役割を調べる目的で行なわれた,ネズミの受動的回避学習に及ぼす海馬損傷の効果を調べた研究(Kimura,1958)があるのみであつた〔註〕。
以上の如く,当時は行動における海馬の機能的役割が全く不明であつたので,予備的研究として,情動仮説・記憶仮説を中心に,種々な実験事態でネズミの行動に及ぼす海馬損傷の効果を調べ,次のような結果を得た(Niki,1962)。
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.