Japanese
English
特集 神経研究の方法論—その新らしいアプローチ
自動診断法
Automated Diagnosis
高橋 晄正
1
Kosei Takahashi
1
1東京大学医学部物療内科
1Dept. of Physical and Internal Medicine, University of Tokyo, School of Medicine
pp.487-498
発行日 1969年11月25日
Published Date 1969/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904621
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Ⅰ.病気の認識のしかたの発展
ギリシア時代においては,病気の認識は著しく直観的なものであつたと考えられる。しかし病気についての観察がくわしく行なわれるようになると,病候学というかたちでそれが纒めあげられ,一つの病気をいくつかの症候の組合わせの型としてとらえることができるようになつた。直観的な病気のパターンを症候群として与えることができたのである。その場合でも,ある症候をそれと認めることは,同じようにパターン認識ではあつても,それは一つの病気を直観的な「パターン」として把握することよりは,認識の客観化の方向へ一歩を進めたことになるものであつた。これは人間の意識内容の発展過程の一般的方向として理解できるところである。しかしそれは,あくまでも現象論の段階を出るものではなかつた。その背後に想定された哲学的な説明は,単に記憶を助けるための便法にすぎなかつたものと考えるべきであろう。
その後,病態生理学の進歩に伴つて,新たな各種の検査成績が加わり,病気の認識が実体論的な段階へと進んでいつた。このことにより,診断が著しく客観性,安定性,再現性を増したことはいうまでもない。これについで,各種の病原微生物が発見されたことは,診断が本質論的な段階へ進んだことを意味するものであり,病気の診断が決定論的な論理にのるかのような錯覚をすら与えたのであつた。
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