Japanese
English
特集 精神薄弱
人脳発育の形態学的考察
Morphorogical consideration on the development of the human brain
溝口 史郎
1
Humio Mizoguti
1
1神戸大学医学部第二解剖学教室
1Department of Anatomy, Kobe University School of Medicine
pp.5-20
発行日 1968年4月25日
Published Date 1968/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904478
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I.まえがき
A.神経管の形成
中枢神経系は全身の諸器官のうちで,最も早期に発生を始め,しかも全体としては最も遅く成熟する器官の一つである.胎生第3週の後半において,外胚葉と内胚葉のみが識別される胚盤の頭側半の正中部の外胚葉細胞が活発な増殖を開始し,細胞は丈が高くなつて互いに密に配列し,したがつて,この部分は他の外胚葉から明らに区別される厚い板状を呈するようになる。これが脳および脊髄の原基で,神経板neural plateと呼ばれる。神経板の左右両側縁のところでは細胞増殖が特に盛んで,この部分はしだいに高まり(神経隆起neural ridge),ここから正中部に向かつて細胞が送り出される。正中部はしだいにくぼみ(神経溝neural groove),神経板は全体としてとゆ状となる。左右の神経隆起は相近づき,ついには相接着するので,神経板は神経管(neural tube)となる。神経管はやがて他の外胚葉(皮膚)から離断して,胎児の背側正中部の皮下に埋沒し,中枢神経系のすべての構造を形成する(図1)。
左右の神経管の癒着は,7個の体節を有する胎児(受精後20〜22日)おいて,将来の脳と脊髄の移行部付近から始まり(図2),ここから頭側および尾側に進む。また神経管は全長を通じて一様の太さを示すものではなく,脳の原基であるその頭側部は,すでに神経板の時期から尾側部よりはいちじるしく大きく,ふくろ状に膨大している。
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