Japanese
English
特集 日本脳炎
動物の日本脳炎
Japanese Encephalitis in Animals
中村 稕治
1
Junji Nakarnura
1
1日本生物科学研究所
1Nippon Institute for Biological Science
pp.223-233
発行日 1967年8月25日
Published Date 1967/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904403
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I.緒言
日本脳炎ウイルス(以下脳炎ウイルス又は単にウイルス)によるヒトの脳炎,ウマの脳炎,ブタの死産はそれ自体保健上あるいは産業上きわめて重大な問題である。しかしながらこれら疾病の形で現われた感染は,わが国に生棲する哺乳動物および鳥類の大部分の間に起こりつつある脳炎ウイルス潜在感染の膨大な背景の前にたつきわめて小さな部分的現象に過ぎない。
脳炎ウイルスの基本的な感染相は,中枢神経系外の感染にあってそれは動物種を超越して起こり,感染早期に一過性に経過し,ほとんど臨床症状を伴わず,いわゆる潜在感染の主体をなすものである。本感染が感染個体に与える損害はほとんどないといってよいが,その感染期には増殖ウイルスが流血中に遊離巡環し(ウイルス血症)同一個体内では中枢神経系内における二次的感染の原因となり,他の個体に対してはカを介しての伝染源となる。わが国ではコガタアカイエカがほとんどもっぱら媒介カの役割を演じており,主要な伝染は,中枢神経系外感染期動物の吸血によるカのウイルス取り込み,カ体内におけるウイルスの増殖(有毒カの発生)有毒カの刺螫による感受性動物の感染の3過程によつて繰り返される。
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