Medical Topics
日本脳炎ワクチン
大谷 明
1
1国立予防衛生研究所
pp.62-63
発行日 1972年4月10日
Published Date 1972/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205074
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日本脳炎の予防接種は必要か
厚生省防疫課の日本脳炎患者監視事業の報告によれば,昭和41年の確認および定型的死亡例数2,017名(罹患率10万人対2.0)を境として,42年には771名,43年には367名,44年には147名,45年には109名と減少の一途をたどっている。このため,近ごろでは日本脳炎の脅威はしだいに人の頭から薄れていき,日本脳炎はこのまま消滅するのではないかという意見も聞くようになっている。
病気の心配がなくなれば,なにも無理して予防接種を受けることはないではないかという思潮が,このごろでは強くなっているのも事実である。ワクチンにつきものの事故を考えると,このような風潮も理解できないことはない。現在もなお日本脳炎の予防接種は,はたしてどの程度必要なのだろうか。この問題を考えるには,まず環境がどのくらい危険性があるかを知る必要がある。厚生省防疫課が毎年実施している日本脳炎流行予測事業の報告をみると,少なくとも北海道,東北地方の北部を除いては,毎年ブタが今日もなお日本脳炎に感染していることが明らかにされている。しかし近年では,ブタの感染からみたウイルスの散布の濃度は,昭和41年ごろまでに比べると,かなりの地方でめだって薄くなっていることも観察されている。端的にいえば,過去に比べ現在もなおウイルスの濃厚な散布がみられているのは,九州,四国と中国の山口県などの日本西部である。患者の発生もこれらの地方に集中している。
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