Japanese
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特集 脳のシンポジウム
主題 脊髄の構造と機能
種々の脊髄疾患における傷害の撰択的局在について
Selective Sites of Lesions in Diseases of the Spinal Cord
豊倉 康夫
1
Yasuo Toyokura
1
1東京大学医学部脳研究所神経内科
1Department of Neurology,Institute of Brain Research,Faculty of Medicine,University of Tokyo
pp.438-445
発行日 1966年10月25日
Published Date 1966/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904317
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I.はじめに
神経疾患の本態や成因を究めるための方法論には,大別して2つの指向がある。そのひとつは,神経系の構造特徴にあまりとらわれることなく,物質代謝,生化学の面から,直接に疾病のメカニズムを解析する接近方法である。フェニールケトン尿症をはじめ,数多くの先天性代謝障害による新しい精神神経疾患が発見されたのは,主としてこの方法の成功を物語つている。この場合,いわゆる"神経疾患"であつたはずの病気は往々にして,一挙に神経疾患の座から全身的な代謝疾患に早変りをするかのようにみえる。しかし,神経系を侵すどの病気も,自らを永遠に"神経学的"たらしめている別の一面があることを忘れてはならない。それは,それぞれの病気が,複雑な分化と統合から成る神経系の構造と機能に対して,何故に,それぞれ特異な選択的侵襲を示すかという問題である。そして,これはすべての神経疾患の本態や成因に近づくための,もうひとつの重要な目標であろう。
すでに大脳,基底核,小脳などの疾患については,病変の局在撰択性の問題がしばしば論ぜられてきたが,ここで脊髄レベルの種々の病気について本問題の考察を試みることが本稿の目的である。
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