特集 第6回神経病理学会
指定討論
摘出脳腫瘍細胞内に観察された多角結晶様構造
谷 栄一
1
Eijchi Tani
1
1京都大学医学部脳神経外科
1Dept, of Neurosurgery, Kyoto University, School of Medicine
pp.327-330
発行日 1966年7月15日
Published Date 1966/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904306
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I.はじめに
グリオーマの分類はCushingおよびBailey2)によりほぼ完成され,電顕学的研究の進歩とともに,さらにその細胞構造の詳細な観察がなされているが,その本質的な点,すなわち,グリア細胞の腫瘍化という点に関しては,なんら根本的な所見は得られず推測の域を脱しない。他方,Zimmermanおよびその協同研究者1)22)23)は種々のcarcinogensにより実験的に動物脳腫瘍を作成して広汎な研究を推進するとともに,動物におけるグリア細胞の腫瘍化という面に一つの新局面を開拓した。
近年,動物腫瘍学特にウイルス腫瘍学の発展につれて,多くの動物腫瘍がウイルスによつて誘発されることが明らかになつたが,Rous肉腫ウイルス20),ポリオーマウイルス15)およびSV405)による動物グリオーマ作製の実験はむしろ悲観的な結果に終わつている。一方,人間に現われる腫瘍に関しては,概念的には動物における細胞の腫瘍化と同じ過程が考えられるが,実際には動物腫瘍のごとく明確な観察所見に乏しく,はたして動物腫瘍と同列にみなしてよいものかどうか疑わざるをえない。しかし,Negroni14)の人間における白血病の研究は,この障害を氷解する突破口を開いたものとして注目され,この見地より4年前観察したグリオーマの電顕像より若干の検討を加えたい。
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