Japanese
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特集 第8回神経化学懇話会
一般演題および討論
脳におけるNAD代謝の特異性—とくに肝臓との比較において
Characteristics of Nicotinamide Adenine Dinucleotide Metabolism in Brain
川合 仁
1
,
松永 龍之助
1
,
鳩谷 龍
1
Hitoshi Kawai
1
,
Ryunosuke Matsunaga
1
,
Noboru Hatotani
1
1京都大学医学部精神医学教室
1Department of Psychiatry, Faculty of Medicine, Kyoto University
pp.255-260
発行日 1966年7月15日
Published Date 1966/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904291
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I.緒言
NAD(nicotinamide adenine dinucleotide)が生体内の酸化還元反応を触媒する諸酵素の主要な補酵素で,生体にとつてきわめて重要な物質であることは今更いうまでもないが,脳のNAD代謝に関してはほとんど研究されていない。脳の呼吸活動がきわめて活発であることは周知の事実であるが,NADのprecursorであるニコチン酸の欠乏によつてペラグラ精神病が発生する事実やHartnŭp病1),Tryptophanuria2)のようなニコチン酸欠乏症状と精神神経症状とを合併するトリプトファン代謝異常の存在,あるいはニコチン酸アミドの拮抗物質であるacetylpyridine3),6-aminonicotinamide4)の投与によつて動物に種々の神経障害をひき起こしうることなどの臨床的事実を考え合せても,脳のNAD代謝研究の重要性は否定できない。
さて周知のように動物においてはNADはニコチン酸およびトリプトファンから二元的に合成されるが,トリプトファンからのNAD合成系は肝臓と腎臓にのみ見られ5)しかも腎臓においてはその最初の反応段階を触媒するトリプトファン・ピロラーゼが欠如しているので,トリプトファンからの合成は主として肝臓で行なわれると考えられる。
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