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大脳の電気的興奮性について—1870年
萬年 甫
,
Gustav T. Fritsch
,
Eduard Hitzig
pp.422-433
発行日 1965年7月25日
Published Date 1965/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904194
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生理学では,その概念を組立てるひとつの必要条件として,神経にはすべて興奮性があると考えている。その興奮性とは特殊エネルギーによつてあらゆる影響に反応する能力のことで,神経の状態はそれによつてある一定の早さで変化をこうむつている。しかし中枢神経系に限つては別の見解がおこなわれている。もつとも,それらの見解のすべてが広く一般に受入れられているわけではない。もしもわれわれが莫大な量にのぼる関連文献の中から,中枢神経系の凡ゆる個々の部分を実験的に刺激して得られた結果の中から信頼し得ると思われる確実なものだけを引用しようとしても,それは余りにもことが大ぎすぎ,また現在のこの仕事の特別な目的にも添うことにはならないと思う。しかし,脳を構成する諸器官の器質的刺激以外の刺激に対する興奮性をめぐつて大きな意見の齟齬があり,ごく最近には脊髄の興奮性について激しい議論がまき起つているとはいえ,今世紀の初めから大脳半球は生理学者の間に知られている凡ゆる刺激に対して全く興奮しないという確信が支配的になつている。
HallerとZinn1)は大脳髄質を傷つけると痙攣様運動がみられると主張した。しかしながら当時は脳を刺激するといつてもほとんど如何ともしがたいようた障害にぶつかり,それにまだまだ当時は実験に用いる刺激を厳密に規定することに充分になれていなかつたので,これらのデータにあまり信をおくわけにはいかない。
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