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特集 第5回神経化学懇話会
一般演題
9.向神経薬物と脳蛋白の相互反応
Interaction between neurotropic drugs and brain proteins
清田 一民
1
,
上野 貞造
1
,
藤田 英介
1
,
寺岡 葵
1
Kazutami Kiyota
1
1熊本大学医学部神経精神医学教室
1Dept. of Neuropsychiatry. Faculty of Medicine, Kumamoto University
pp.847-849
発行日 1963年8月25日
Published Date 1963/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904075
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最近登場してきた各種の向神経ないし向精神薬物は,内因性精神病における発生機転の不明な精神症状に対して,かなり撰択的な効果を現わす点で注目されます。今かりに,これらの患者において,脳のどこかの「場所」に未知の欠陥があるとすれば,そこに薬物が「働」らいている間だけ,または投薬中止後も相当ながく,その場所が正常にちかい状態になつていると想像されます。最近,麻酔状態の動物から摘出した脳切片が,その中に想定される麻酔薬の含量は問題となる程度ではないにもかかわらず,in vitroの代謝において,かなり恒久的な変化をおこしていると報告されています。このように,薬物が「働らく」ということは,細胞構造のどの部位かの基質と反応して,一過性にまたは比較的恒久的に基質の状態を変えることと老えることができます。細胞の構造を,蛋白のような高分子レベルの構造まで掘り下げて考えてみますと,最近のX線解析の成績に見るように,機能とともに蛋白や脂質分子の配列状態が可逆的に変化することが推定されます。細胞の分子レベルの構造と機能の距離は著しく短縮され,構造即機能と考えることができます。中枢の蛋白に対する薬物の「働らき」から逆に,病者の中枢における分子レベルの構造即機能の欠陥に対して,何らかの糸口が得られないだろうかという意図のもとに,本実験を企てました。
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