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Ⅰ.はじめに―ダンピング症候群とは―最近,提起されて来た問題点
潰瘍であれ,癌であれ,胃切除術を受けた患者のほとんど大半は,原疾患が治癒すると健常な状態に復するものであるが,ごく少数の胃切除術後患者の中には,食直後に,蠕動亢進,腹部膨満,悪心,嘔吐,下痢,腹鳴,腹痛,全身倦怠,めまい,頻脈,発汗,動悸などを訴え,時にdesire to lie downと表現されるように,いわゆる血管運動性失調を伴った腹部症状を訴える症例がある。このような症候群をダンピング症候群といい,初めて記載したのはDenechau(1907)1)であり,ダンピング胃という名称をつけたのはMix(1922)1)である。その発生頻度2)は,欧米では32.1%,わが国では16.3%といわれるが,通常はもっと少なく,明らかにその定義を充たす症例は1〜2%である。一般に癌手術後には発生は少なく,潰瘍手術後に多い。
その原因に関しては,実に多くの学説1)が述べられてきた。
There have been many theories concerning the etiologic factor of the dumping syndrome after gastrectomy.
Among them, the occurrence of the dumping syndrome after the oral administration of hypertonic glucose solution is well known, and 5-HT has been regarded as one of the humoral agents which is released by hypertonic glucose solution and plays an important role in the etiology of the dumping syndrome.
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