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特集 脊髄血管障害
脊髄血管障害の病理解剖—動脈硬化性病変を中心として
Spinal cord lesions due to the arteriosclerosis: Pathological study
萬年 徹
1
Toru MANNEN
1
1東京大学医学部脳研究施設神経内科
1Department of Neurology, Institute Brain Research, School of Medicine, University of Tokyo
pp.505-511
発行日 1974年6月10日
Published Date 1974/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903633
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Ⅰ.脊髄動脈の動脈硬化について
脊髄動脈の硬化性変化は,脳や他の諸臓器の動脈と比較して,はるかに程度が軽いものである。脊髄の動脈硬化については,すでに1884年Demangeの研究があるが,多数の症例についてこのことを検討したのはStaemmler1)であろう。彼は各年代を網羅した668例の脊髄につき,その血管の変化を調べた。彼の検索対象のうち60歳以上の症例は283例に達しており,なかでも48例は全身の動脈硬化症,脳動脈硬化症,高血圧,悪性腎硬化症であったが,これを考慮に入れても脊髄動脈の硬化は軽度であり,脊髄を養うにはなんらの支障にならぬことを述べた。この論文の中で,彼は老年になって目立つのは動脈の変化より髄内外の静脈の硝子様変性で,高度の脂肪沈着,石灰沈着であり,これらの変化が外膜から始まることを指摘している。Staemmlerの少し前にKeschenerとDavison2)が動脈硬化とそれによる脊髄障害の問題を取りあげたが,その後しばらくは,まとまった脊髄血管の病理学的研究には,大きな動きはなく過ぎていたが,1960年代にいたり,この問題に対する関心が高まり,多くの国々から次々と報告が出るようになった。
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