Japanese
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特集 慢性進行性神経疾患・Ⅱ
免疫
重症筋無力症の自己免疫現象と病態生理
Autoimmunity and patho-physiology in myasthenia gravis
難波 達治
1,2
Tatsuji NAMBA
1,2
1マイモナデス医学センター内科
2ニューヨーク州立大学ダウンステイト医学センター医学部内科
1Department of Medicine, Maimonides Medical Center
2State University of New York Downstate Medical Center, College of Medicine
pp.985-996
発行日 1972年12月10日
Published Date 1972/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903449
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はしがき
重症筋無力症の病因が自己免疫であるという説が唱えられてから12年になる。この間に多数の論文が発表されたが,ここ数年その数が激減して,この方面の研究が曲り角に来ていることを物語っている。この小文ではこの間の業績を簡単にまとめ,本症の病態生理ならびに臨床との関連の現状を述べてみたい。
重症筋無力症の自己免疫説を最初に唱えたのが誰であるかについては関係者の間で論争されている。時間的にはSmithers92)が1959年に放射線研究の論文に本症の自己免疫の可能性を触れたのがおそらく最初であろう。次にNastuk,Osserman,Strauss,and Plesciaを主メンバーとするグループの実験的成果がある。彼らの研究は蛙横紋筋の筋膜が患者血清に接したときに正常血清に接したとき以上に破壊されることをたまたま観察したのにはじまる(1959,1960年)70,71)。この現象が溶血の膜破壊と共通するとの想定で患者血清の補体価を計ったところ,その値が正常値よりも広い範囲にわたっており,補体を要する免疫反応の存在が考えられ(1960年)69),さらに抗筋横紋抗体を患者血清中に検出して重症筋無力症の自己免疫研究の出発点を作った(1960年)96)。他方Simpsonは臨床的に症候,治療,合併症などを検索して自己免疫の原因としての可能性を説いた89)。
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