特集 第1回神経病理懇話会
〔特別講演〕神経病理学の進歩のために
内村 祐之
1
1東京大学
pp.53-56
発行日 1960年10月30日
Published Date 1960/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901810
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第1回目の神経病理懇話会に何か話をしろと世話人からの依頼がありました。私はお断わりしましたがたつての要請もあり,また演題はなにかというので一応,神経病理学経験談ということにいたしました。今日は本当は皆様がいろいろと新しい問題についてお話になるのを聴きに参つたわけでありますが,そういうお約束でもありますので,限られた時間でありますが,1,2私の感じておることをお話して,これから神経病理学をおやりになる方々に多少とも御参考になれば,と思つております次第です。
まず私はこの神経病理学懇話会が新しく発足しまして,しかも大変盛会であることを衷心がら喜ぶものの一人であります。神経学或は精神医学の範囲の中で,最も古くからわが国に導入されて,しかも日本で最も大きな実績と伝統を挙げている領域が何であるかといえば,それは神経病理学であると断言して,私は憚からないと考えます。今日はこの道の大先輩ともいうべき林道倫先生が出席されており,いわば生きたサンプルで(笑)あられることを,皆様とともに大変幸福に感ずるものであります。とにかく日本から世界的レベルの仕事が最も輩出しているのは,少くとも精神医学の領域では神経病理学であると私は老えております。したがつてこのような伝統のある領域を,今後も温かくしかも立派に育ててゆきたい気持が大きいのであります。しかし近来神経生理学或は神経化学のような新しい領域の研究が非常に進んでまいりました。
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