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特集 第31回脳のシンポジウム
脳血管―構造と機能
脳血管内皮と循環調節(抄録)
The function of cerebral endothelial cells
室田 誠逸
1
Sei-itsu MUROTA
1
1東京医科歯科大学大学院細胞機能制御学講座
1Department of Physiological Chemistry, Graduate School, Tokyo Medical and Dental University
pp.985-986
発行日 1996年12月10日
Published Date 1996/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431900807
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最近血管内皮細胞の培養技術が進歩し,脳の微小血管から内皮細胞のみを分離し培養の系に移すことが可能になった。ブタの脳から得られた血管内皮細胞を用いて,そのエンドセリン産生能に与える酸素ならびに二酸化炭素の影響を調べた。ブタ脳微小血管由来内皮細胞の初代培養において検討したところ,この内皮細胞はエンドセリンのmRNAを常時発現しており,培養開始とともに,エンドセリンを産生し続け,培養液中のエンドセリン濃度はほぼ直線的に少なくとも12時間に至るまで上昇した。気相中の酸素濃度を通常の20%から4%へ落とすと,途端にエンドセリン産生は低下した。この結果は,酸素不足に対応して血管を拡張する必要性を感知した脳の血管内皮細胞が,血管収縮性のエンドセリン産生を減らしたものと考えられ,理に適った反応と思われる。同様にして,気相中の二酸化炭素濃度を通常の5%から2.5%に減じた場合には,エンドセリン産生能は逆に上昇した。また,つくられたエンドセリンは,流血中へ放出されてしまっては意味がないので中膜平滑筋細胞が存在する基底膜側へ放出される必要がある。そこで,脳微小血管内皮細胞をフィルター上に培養して,詳細に検討したところapical側に比してbasal側に2倍量のエンドセリンが放出されることが判明した(Yoshimoto S,et al:Stroke 22:378,1991)。
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