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はじめに
発生初期において神経回路網を形成するうえで神経細胞死は重要な役割を果たしている。この神経細胞死は自然神経細胞死(Naturally occurring neuronal death)と呼ばれ,シナプス形成時期に標的細胞とシナプスを形成できなかった神経細胞が能動的な機構により脱落する。幼若期の脳ではこの自然神経細胞死によって誤ったシナプス結合を排除し正常な神経回路網を形成することができる。一方,神経回路網ができあがった後の成熟した脳において神経細胞はもはや分裂能を失っており,固定された構成メンバーによって脳の機能を支えている。この時期の神経細胞死は神経回路網の崩壊により,脳機能の障害を引き起こすことになる。アルツハイマー型老人性痴呆症(アルツハイマー病)は神経細胞変性疾患の一つであり,高年齢になるにつれて発症率が高くなる。アルツハイマー病脳の典型的な病理学的特徴は,1)アミロイド蛋白が凝集し蓄積した老人斑の出現(細胞外)。2)微小管結合蛋白質タウが異常にリン酸化され不溶性となり神経細胞内に蓄積した神経原線維変化(細胞内)。3)神経細胞死による脳の萎縮が挙げられる。アルツハイマー病における神経細胞死はこれらの病理学的特徴から類推することができる。この病理学的特徴の時間的変化を調べてみるとアルツハイマー病の初期病変として老人斑が出現し,次いで神経原線維変化が観察される。
Pathological changes in Alzheimer's disease are characterized by cerebral cortical atrophy as a result of degeneration and loss of neurons. Typical histological lesions include numerous senile plaques composed of deposits of β-amyloid (Aβ) and neurofibrillary tangles consisting predominantly of ubiquitin and highly phosphorylated tau proteins. In cell culture, exogenous application of synthetic Aβ is known to induce neurotoxic effects in rat hippocampal neurons. Neuronal death induced by Aβ is accompanied by some protein synthesis.
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